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大阪家庭裁判所 昭和42年(家)4338号 審判 1967年7月07日

申立人 野田太一郎(仮名)

事件本人 野田美津子(仮名)

主文

一、申立人を事件本人の扶養義務者と定める。

二、事件本人の保護義務を行うべきものの順位について申立人の順位を事件本人の配偶者野田康行の先とし、申立人を事件本人の保護義務者に選任する。

理由

本件調査の結果によると、事件本人は精神障害者であるが、事件本人の配偶者(夫)野田康行もまた精神障害者であつて入院中であり、民法第八七七条一項に定める事件本人に対する扶養義務者としては父川村浩史、母ノブに兄一人妹二人(いずれも既婚者)がある。ところが事件本人の両親らは、康行と事件本人とがさきにともに精神科の病院に入院中に知り合つた仲であるので、両者の結婚には極力反対したが、事件本人が右両親の意見にさからつて敢えて康行と結婚したため以後事件本人をいわゆる勘当するという態度をとり、事件本人の兄妹らも事件本人と一切の交渉を断つに至つた。他方申立人は康行の父であり、事件本人とは姻族一親等の間柄にあるところ、もともと申立人も康行と事件本人との結婚には反対していたが、現に右両者間の長女政子(昭和四〇年二月一三日生)を手もとに引き取つて養育し、妻はる共々かねて何くれと事件本人らの面倒を看てきたもので、このような関係から、申立人はこの際事件本人についての保護義務者となることを了承していることが認められる。

叙上認定の事実関係に徴するときは、事件本人の保護のためには精神衛生法第二〇条二項所定の保護義務者の順位を変更するのが適当であり、そして申立人に対し事件本人の扶養義務を負担させたうえ、その保護義務者に選任するのが相当である。

よつて民法第八七七条二項、精神衛生法第二〇条二項に基づき、主文のとおり審判する。

(家事審判官 朝田孝)

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